大野晴夫さんは、自分や他の福島の漁民らは、機能不全に陥った原子力発電所からの処理水の海への放出に反対していると語る
大野晴夫さんは、自分や他の福島の漁民らは、機能不全に陥った原子力発電所からの処理水の海への放出に反対していると語る AFP

福島の漁師の多くは口を閉ざしているが、大野治夫さんは、近くにある被災した原子力発電所からの処理済み冷却水を木曜日から太平洋に放出するという日本の計画について、自分の考えを抑えきれないでいる。

2011年の津波で工場が壊滅的被害に遭い、弟を亡くしたオノさんはAFPに対し、「放水は私たちにとって何も有益ではない。私たちにとって何のメリットもない。何もない。すべてが有害だ」と語った。

「漁民は100パーセント反対だ」と71歳の男性は、東北地方の原子力発電所から北に約60キロ離れた新地町の質素な自宅で語った。

「海は私たちが働く場所です。私たちは海で生計を立てており、海に翻弄されています。では、私たちが海を守らなければ誰が守るのでしょうか?」

2011年に1万8000人が死亡した地震と津波以来、オリンピックのプール500個分以上に相当する約134万トンの水が福島原発に蓄積している。

メルトダウンに陥った高放射能の原子炉炉心を冷却するために使用され、地下水や雨と混ざって汚染された。

しかし、原発運営者の東京電力は、水は希釈され濾過され、トリチウムを除くすべての放射性核種が除去されており、危険レベルをはるかに下回っていると述べている。

海上1キロメートル(0.5マイル)のパイプを介して、1日最大50万リットル(13万2千米ガロン)の水を段階的に放出し始める計画が、国連の核監視機関の承認を得た。

しかし、日本の漁業関係者の多くは、福島事故から12年を経て回復し始めた矢先に、日本の水産物の評判を心配している。

「(2011年以降)福島は人々が避けるべきものとみなされていた。人々が他県に避難しなければならなくなった時には、福島の車のナンバープレートさえも外された」と地元アーティストの児玉智美さん(40)はAFPに語った。

「もし発電所から水が放出されたら、世界がそれをどのように受け入れるか心配です」と彼女は語った。

水産物は国の誇りであるだけでなく、日本の主要産業でもあり、2022年には約60万トン(約20億ドル相当)が輸出される。

このうち約4分の1を占める最大の顧客は中国だが、中国政府は日本政府が放水で海を「下水道」のように扱っていると非難している。

専門家らによると、この動きの一部は他地域での対立が動機となっており、中国は放出前から日本の10県からの食品出荷を禁止し、その他の地域では放射線検査を課していた。

こうした時間のかかる規制により、先月すでに中国への日本産水産物輸入量が30%減少していると、日本と中国のメディアが中国の税関データを引用して報じた。

日本の水産物輸出にとってもう一つの重要な市場である香港も規制の脅威にさらされており、他の地域の消費者がどのように反応するかは不透明だ。

日本の全国漁業協同組合の坂本正信組合長は月曜日、この動きへの反対を改めて表明した。

「(科学的な)安全性は必ずしも社会の安心感につながるわけではない。放流されれば風評被害が懸念される」と述べた。

「水産業関係者が安心できるわけがない」と語った。

3人の息子も漁師である小野さんは、漁業関係者は「(2011年以降)多くの面で本当に大変だった。そして12年が経った今、ようやく落ち着き、幸せに向かって少しずつ進んでいる」と語った。

「政府が今やっていることは福島を見捨てることだ。政府が本当に守るべきは東電ではなく福島県民と漁民だ」と語った。

日本は昨年約20億ドル相当の水産物を輸出したが、漁業関係者の多くは放水による風評被害を懸念している。
日本は昨年約20億ドル相当の水産物を輸出したが、漁業関係者の多くは放水による風評被害を懸念している。 AFP
福島原発事故から12年が経ち、日本の漁業はようやく回復し始めたばかりだった
福島原発事故から12年が経ち、日本の漁業はようやく回復し始めたばかりだった AFP